なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「兄さん、戯(たわむ)れはやめてください。朱熹が困っています」


 曙光の落ち着いた声が耳に届く。


(え……兄さん?)


 聞き捨てならない言葉が出てきて、朱熹は目を開け、そっと曙光の方に顔を向けた。


「だって、二人とも面白いから」


「私たちは玩具じゃありませんよ」


 曙光は穏やかに陽蓮を諭している。


 どうやら、朱熹が曙光のことを好きだとは思っていないらしい。


 安心する一方、曙光が陽蓮のことを兄さんと呼び、敬語を使って話していることに驚きを隠せない。


「え、あの、兄さんって……」


 朱熹の戸惑いに、曙光は苦笑いを浮かべる。


「そう、この方は私の兄だ。

皇位継承権は兄の方が上。

だが、わけあって今は私が皇帝をしている」
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