なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「えっ! お兄さんがいたなんて初めて聞きました!」


 驚く朱熹に、秦明が話に入ってきた。


「公には、前皇帝の子供は曙光だけになっている。

このことは、絶対秘密だよ。もちろん林冲もね」


 秦明は、後ろの方で黙って事の成り行きを見守っていた林冲に向かっても言った。


 林冲は驚く様子もなく、「かしこまりました」と軽く礼をした。


「え、え、え?」


 どうして秘密なんだろうか。


 なぜ、皇子が政務殿ではなく、人気のまったくない芸術の森に毎日いるのだろうか。


 疑問がたくさんありすぎて、朱熹の頭は混乱していた。


「朱熹には今夜、きちんと説明する。だから今日はもう後宮に帰ろう」


 曙光はそう言うと、まるで陽蓮から引き離すように、朱熹の腰に軽く手を当てて出入り口へと誘導する。
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