なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 けれど、他に適任者がいないのだから仕方ない。


 だが、国民の不安はすぐに消え去る。


若くして皇帝となった曙光は素晴らしい手腕を発揮した。


皇帝となるべくして生まれた男だった。


「しかし兄さんが皇位を継ぐことに、三公九卿は反対した。

そして彼らは、兄さんは災害で死んだものとし、余を皇帝に君臨させた」


 曙光は悔しそうに言った。


その言い分から、皇帝になりたくてなったわけではないことが垣間見られる。


「余よりも皇帝に相応しいのは兄さんなのだ。

兄さんを差し置いて皇帝になるなんて本来あってはならないことだ。

確かに兄さんは風変りがところがあるが、学もあり頭もいい。

余よりも優れた皇帝となるだろう。

だから余は、兄さんが一念発起して皇帝の座を奪いに来ることをずっと待っていたのだ。

兄さんがその気にさえなれば、三公九卿さえも抑えられる。

その力は持っている。

けれど、兄さんはあの通り、毎日革胡を弾いて過ごしている」
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