なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「陛下は皇帝の座を降りるおつもりなのですか?」


 朱熹の問いに、曙光は迷いが生じた。


 これまでなら即答できた。


 でも今は……。


 真剣な眼差しで見つめる朱熹の顔を見ると即答できない自分に気が付いた。


「……兄さんがその気になれば。

元々皇帝を継ぐべきは兄さんだったのだから」


 曙光は朱熹から目を逸らして言った。


「では、私はどうなるのですか?」


 朱熹の純粋な問いに、曙光は言葉に詰まった。


「うむ……そのことなのだが……」


 曙光はこれまで思い悩んでいたことを告げなければいけない時が来たことを悟った。


 できれば曖昧にしておきたかった。


 このまま少しでも長く夫婦として過ごしたかった。


「朱熹は、どうしたい?」
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