なりゆき皇妃の異世界後宮物語

「あなたは……、あなたはそれでいいんですか！」


　朱熹は思わずカッとなって叫んだ。


　曙光は驚いた様子で朱熹を見ている。


「皇帝の座を降りることも、私が陽蓮さんの妻になることも……、あなたはそれでいいんですかっ！」


　朱熹は全身から絞り出すように声を張り上げる。


　悲痛な叫びを曙光に届けるように。


「あなたは国を……自分の手で良くしたいとは思わないのですか！

その程度の責任感で皇帝の座に座っているのですか！」


　怒った朱熹の言葉は、曙光の胸に深く刺さった。


　同じようなことを秦明に言われても、まったく刺さらなかったのに、朱熹の言葉は自分の押し殺してきた思いの蓋を叩き割るような勢いがあった。


「私のことも……。

私をなんだと思っているのですか！

私は物なんかじゃない！

そんな簡単に人に渡さないでください！」