なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「でも小さい頃にかけたものが今だに解けてないって、よっぽど強力な催眠術だったってことじゃないですか」


「そんなことないよ。硬貨を糸につら下げて揺らすあれだよ。小さい頃一度はやったことあるだろ?」


「ないですけど……」


 その催眠術なら朱熹も知っていた。


まさかあれで本当にかかる人がいるとは……。


「えー、ないんだあ」と陽蓮は残念そうに言った。


「陛下は、陽蓮さんが皇帝になる為に、いつでも玉座を降りるつもりでいます」


「うん、知ってる」


「陽蓮さんは皇帝になるおつもりがあるのですか?」


「ないよ」


 やけにあっさりと言われた。


 でも、あると言われた方が驚く。


 陽蓮は皇帝とか政治とかにまったく興味があるように見えない。


「では、陛下にそのことを伝えてください」
< 173 / 303 >

この作品をシェア

pagetop