なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 歴代随一といわれる文武両道最強の皇帝だ。


 だからこそ天河国は曙光を亡き者にしたかった。


 五年前の大災害で多くの皇族が亡くなった今、脅威は曙光ただ一人。


 天河国にとっては、またとない好機なのだ。


「おい、曙光、また命を狙われたらしいな」


 皇帝に向かってこんなにもフランクに話し掛けてくるのはただ一人。


 女たらしで幼馴染の秦明が、まるで天気の話でもするかのように声を掛けた。


 曙光は広大な庭にある的場で、弓の訓練をしていた。


 弓矢を打ちやすいように、右肩の衣は脱いでいる。露わになった筋肉質な上腕は、鍛え上げられた肉体を垣間見せていた。


 弓の訓練に邪魔にならないように、お付きの者が二名ほど脇に従えていた。
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