なりゆき皇妃の異世界後宮物語
そんな両親は、朱熹が十三歳の時、天江国南部で起きた未曾有の大災害に巻き込まれて亡くなった。


たまたま仕事の都合で南部に出掛けていた時に大嵐が起こったのだ。


河川が氾濫し、その災害で一万人以上の犠牲者が出た。


朱熹の両親はとても優しかった。


けれど、躾にはとことん厳しかった。


 ただの平民にも関わらず、朱熹に学問を教え、礼儀を徹底的に仕込んだ。


『どこに出しても恥ずかしくない娘にする』


 というのが両親の信条で、おかげで朱熹は良家の令嬢、いやそれ以上の知識と教養を持つに至った。


 朱熹をよく知る幼馴染や近所の人達からは、後宮の女官になったらどうかと散々言われてきたが、朱熹は首を横に振るばかりだった。


(後宮なんて私にとっては監獄のようなところだわ。

私は好きな餡餅を作って、美味しいと思ってもらえることがなにより嬉しい)
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