なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「まったく、私生活にまで関心を寄せるなと言いたい」


「世継ぎを作るのも皇帝の立派な仕事だぞ」


「その話は聞き飽きた」


 秦明は笑いながら弓を引く。


最後の一矢だというのに、余計な力がどこにも入っていない。


「奴に嫉妬してるんだろ」


「してない」


「嘘をつけ。二人が仲良く革胡を弾いていた時のお前の顔。なかなかの見物だったぞ」


 秦明が矢を放つ。


 最後の一矢も、綺麗に真ん中に命中した。


 曙光も真ん中に当てれば引き分け。


 だが、外れれば秦明の勝ちである。


「その話はやめろ」


 曙光は明らかに動揺していた。


 秦明が三発とも真ん中を射止めたことに関してではない。


 朱熹と陽蓮の話が出たためだ。
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