なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「盗られてもいいのか?」


「朱熹は物じゃない」


 苛立つ様子を見せながら、曙光は矢を打つ準備に入る。


「皇帝の座も、好きな女も、お前の大切なものを奴に渡してそれでいいのか?」


 朱熹も似たようなことを言っていた。


『皇帝の座を降りることも、私が陽蓮さんの妻になることも……、あなたはそれでいいんですかっ!』


 初めて朱熹が怒っている姿を見た。


 剥き出しの怒りと悲しみを真正面からぶつけてきた。


『あなたは国を……自分の手で良くしたいとは思わないのですか! その程度の責任感で皇帝の座に座っているのですか!』


 この言葉は、ずっと曙光の胸に突き刺さっている。
< 184 / 303 >

この作品をシェア

pagetop