なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 その程度の責任感……。


 そんなつもりはなかった。


突然皇帝の座に担ぎ上げられた時から、無我夢中でがむしゃらに働いてきた。


 若い皇帝と侮られ、他国の侵略を許すまじと武力強化もしてきたし、国を少しでも豊かにして人々が安心して暮らせるように苦心してきた。


 国民に寄り添い、民の暮らしを身近に感じ、末端の声に耳を傾けようと会釈の機会を増やした。


 その地道な取り組みから朱熹と出会った。


 決して投げやりな気持ちで政治を取り仕切ってきたわけではない。


 朱熹のことだってそうだ。


 彼女の気持ちと、亡き両親や先祖のことを考え、自分の気持ちを押し通すことが果たしていいのか迷っているのだ。


 好きだと伝えていいのか……。
< 185 / 303 >

この作品をシェア

pagetop