なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「でも……」


 朱熹は視線を落として、小包みの中に入った髪飾りを見る。


 いくら陛下からの贈り物とはいっても、陛下の懐に入ってくるのは国民の血税。


 平民だった朱熹には、税の重さを身を持って体験している。


 髪飾り一つにお金をかけるくらいなら、もっと街の治安にお金をかけてほしいと思ってしまう。


「やっぱり貰えないです」


 朱熹は元のように丁寧に小包みを直した。


「いけません! 陛下が二度と訪れなくなってもいいのですか!」


 今香は怒りを露わにした。


 けれど朱熹の意思は変わらない。


「気持ちはとても嬉しかったと文を書きます。陛下はきっと分かっていただけるはずです」


 今香はため息を吐きながら頭を抱えた。
< 193 / 303 >

この作品をシェア

pagetop