なりゆき皇妃の異世界後宮物語
『これだから陛下に飽きられるのよ。男心の分からない小娘が、陛下を満足させることなんてできないんだわ』


 今香の心の声は、今まで一番辛辣なもので、さすがの朱熹も傷付いた。


 でも今香の意見も一理ある。


 平民上がりの偽令嬢が、皇帝陛下に意見を申すなんて思いあがりも甚だしい。


 好きな気持ちが溢れてしまって、陛下の気持ちを試すようなことを言ってしまった。


 中途半端な気持ちなら触らないでなんて、よくもそんなことが言えたものだ。


 陛下が私を好きになることなんてあるはずがないのに。


 そんなこと望むだけ無駄なのに。


 どうして私はあんなことを……。


 急いで文を書き、小包みごと今香に渡し、部屋に一人になると涙が出てきた。


 ここに来ないでくださいなんて言わなければ良かった。
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