なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 もう会えないかもしれない。


 文には、会いたいですとは書けなかった。


 素直になることができない。


「曙光様……」


 ふと、名前を口にしてみる。


 恐れ多くて呼び捨てにはできない。


 けれど、様をつけてなら呼べそうな気がする。


 次に会う時は、曙光様とお呼びしよう。


 名前を呼んだら、あの方はどんな顔を見せてくれるかしら。


 そう思い、すぐに次は来ないかもしれないと現実に戻る。


 もう、名前を呼ぶこともできないかもしれない……。


 朱熹はハラハラと涙を流し、両手で顔を覆った。
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