なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 髪飾りを送り返した次の日、落ち込んでいる朱熹に思いがけない出来事が起こった。


「朱熹様! 陛下からの贈り物が届けられました!」


 部屋の外から、今香の珍しく興奮し、弾んだ声が投げかけられる。


「え? そんなまさか……」


 朱熹は部屋の扉に駆け寄る。


「入って」


 扉を開けた今香は、茎を色紙に包まれた一本の花を手渡した。


「陛下からでございます」


 恭しく差し出された一本の花を受け取る。


「これは、牡丹ね……」


 薄桃色の可憐な花弁に彩られた大輪の花は、たった一本でも優雅な華やかさを身に纏っていた。


「綺麗……」


 青色の薄い色紙は、丁寧だけど少し不器用に巻かれていた。


「皇城に咲いていた牡丹を、陛下自らの手で切ったのでしょうね」


 今香の言葉に、朱熹は泣きそうになった。
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