なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 曙光が、朱熹のために、どの花を贈ろうかと選んでいる姿を想像したのだった。


 一輪の牡丹の花を、愛おしそうに見つめながら、目に涙を浮かべている姿を見て、今香はそっと退出した。


 何か声を掛けたり、部屋に居続けることが、無粋な気がしたからだ。


 朱熹は牡丹を小さな花瓶に飾ると、花鋏を持って庭に出た。


 そして、庭の中で大木から美しく咲き誇る椿の花を一輪選んだ。


 薄桃色で乙女椿という品種で、その愛らしい姿は朱熹のお気に入りだった。


 茎の先端に湿らせたガーゼを巻き、二種類の色紙を使って綺麗に包む。


仕上げに細いリボンを茎に巻くと、可愛らしい仕上がりとなった。


 感謝の気持ちを伝えたくて、文を書こうと思った。


 あまり長くならないように、そっと添えるだけの文章を考える。
< 197 / 303 >

この作品をシェア

pagetop