なりゆき皇妃の異世界後宮物語

「ど、ど、どういうことですか!? その書状、見せてもらってもいいですか!?」


　主人から書状を受け取り、目を通す。


　そこには確かに、皇帝陛下に献上するようにとのお達しが記載されていた。


「うちの餡餅はとても美味いと宮廷の高官が陛下に言ったらしいのだ。

それをお聞きになった陛下はぜひ食べてみたいと興味を示されたらしい。

こんな名誉なことが儂の生きているうちに起ころうとは。

長生きするもんだな、ばあさん」


「本当に……」


　主人と奥さんは目に涙を浮かべて喜んでいる。


　数多ある高蘭の小さな店で作っている食べ物が、皇帝陛下に召し上がっていただけるなんて夢のような話だ。


　朱熹もこの最大の誉れに感動していたが、書状を全て読み終えた今、手放しでは喜べなかった。