なりゆき皇妃の異世界後宮物語
後宮から唯一出られる立場の皇后にしたのは、自由に宮廷を歩き不穏な動きをしている者を見つけるためではないのか。


 どうして私を使わないの?


 朱熹は、ハッとして曙光の言葉を思い出した。


 長年皇族に仕えていた朱熹の一族が姿を消したこと。


 曙光は、朱熹の先祖は再び心の声が聴こえるという能力を皇族のために使われることを良く思っていないのではないかと懸念していた。


 そして、朱熹の気持ちを尊重したいと言った。


(もう、なんてお人好しなの! 自分の命が危険って時に!)


「ちょっと待ってて! すぐに曙光様に贈るお花を摘んでくるから!」


 朱熹は今香にそう告げると、庭に駆け出した。


 そして百日草の花を見つめると、急いで色紙に包んだ。
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