なりゆき皇妃の異世界後宮物語
(百日草の花言葉は、遠くの友を思う、そして、注意を怠るな)


 しばらく会えずにいる曙光を思う気持ちと、身を案じる気持ち。


 朱熹の気持ちを表すのにぴったりの花言葉だ。


 でも、曙光が百日草の花言葉を知っているとは限らない。


 朱熹は今まで出せなかった勇気を出し、筆を動かした。


〈覚悟ができました。今宵、お会いできますでしょうか〉


 文をしたため、百日草に添える。


 今香に託し、あとは曙光の訪れを待つだけだ。


 ……覚悟。


 文に書いた文字を思い出す。


 覚悟は様々な意味を持つ。


 例え先祖の意思に反することになっても、曙光を守る。


 その強い気持ちの根本にあるのは、曙光を男として慕う気持ちだ。


 好きな気持ちを隠さない。


 例え実らなくても、愛する人が幸せになるようにこの身を尽くすだけだ。


(曙光様、どうか私をお使いください。あなたの為に使われるなら、私は本望です)


 朱熹は、覚悟を決めた。
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