なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 今夜、皇帝のお渡りが行われるとお達しが届き、後宮内は騒めき立った。


 朝の訪れを待たずに皇后の部屋を出て以来、お渡りは行われていない。


 この事実が何を意味するのか、噂好きの女たちにとって格好の餌食とされていたのだ。


 それが、久しぶりのお渡りである。


 彼女たちの話のネタにされるのは当然であった。


 一方、心の声が聴こえるにも関わらず、後宮内の噂話ですら耳に入らない孤立無援の朱熹は、曙光の来訪を今か今かと心待ちにしていた。


 あんな別れ方をしてしまっているから、会うのはとても気まずい。


 どんな顔をして、どんな話の振り方をすればいいのかも分からない。


 けれど、曙光を助けるためである。
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