なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 誰かのためと思う時、か細い朱熹の体から想像もつかないほどの勇気と強さが発揮されるのだ。


 ついに曙光が到着した。


 朱熹はいつものように最敬礼の拱手の体勢で曙光を出迎えた。


 曙光は何も言わずにいつもの部屋へと直行する。


 酒が置かれている卓に座り、自分で酒を注ごうとしたので、朱熹は慌てて杯に酒を注いだ。


 曙光は一気に酒を喉に流し込んだ。


 ふーっとため息のような深呼吸をする。


 この一連の流れまでに、一切の会話はない。


 互いに、というか、明らかに曙光の方が緊張している。


 朱熹もいつも以上に身構えて曙光の訪れを待っていたので、曙光の緊張ぶりは見ていて痛々しいほどだった。
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