なりゆき皇妃の異世界後宮物語
しかし、それを素直に曙光に言っていいものなのか……。


 突然好きと言われて、曙光は面食らうだろう。


 自分のことより相手のことを気にかけてしまう男である。


 朱熹の恋心を利用することに戸惑いを覚えるかもしれない。


「曙光様に立派な皇帝になってほしいからでございます」


 これなら嘘じゃない。


 朱熹は悩んだ挙句、上手い返答を思いついた。


「だが、兄が……」


「曙光様がいつ皇帝を降りられるかは、私が口を出す問題ではありません。

しかしながら、私は曙光様に天江国を立派な国にしていただきたいのです。

国民は貧富の差が激しく、災害や疾病に苦しんでおります。

私は平民だったからこそ、その辛さを知っているのです。

助けたいのです。

苦しんでいる人々を。

目に映る人も、見えない人も、等しく平等に手を差し伸べたい。

曙光様となら、それが叶う気がするのです」
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