なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 曙光の夢を笑わなかったのは、陽蓮と秦明だけ。


 けれど、あまりの恥ずかしさに二度と人前で夢を語ることはしなかった。


 自分にはできないのだろうと諦めようとしていた。


夢は夢である。


叶う者と叶わぬ者がいる。


自分にはできなくても、サポートする側になればいい。


 そう思って蓋をしてきた。


 だが、朱熹の話を聞いて、自分にもできるような気がしてきた。


 目に見えない者でも、声なら聴こえるのではないか。


 声なき声を聴ける朱熹がいれば。


 もちろん、遠く離れた者の声は、朱熹にも聴こえない。


 声というのは比喩であって、文でも一揆でも何でもいい。


 声なき声に耳を傾けようと意識することが大事なのだ。


「朱熹……」


 思わず曙光は手を伸ばし、朱熹の頬に触れた。
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