なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 曙光は身を挺(てい)して朱熹を守りながら、刃をかわした。


 その時だった。


 朱熹の胸に直接届くように心の声が聴こえた。


『守らなければ』


 一瞬、曙光の心の声が再び聴こえたのかと思った。


 でも、曙光の声とは明らかに違う。


 その声をどこかで聞いたことがある気がした。


 胸に響くような心の声は、ただ心の中で呟いた声とは違う。


 とても強い意思がなければ、このように胸に響くようには聴こえない。


 奇襲が失敗に終わった黒ずくめの男は、曙光に再び襲い掛かることなく逃げることを選んだ。


 真正面から戦っても勝ち目がないことを分かっているらしい。


 逃げる黒ずくめの男を追いかけようとするが、朱熹のことが心配で追う足が止まる。
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