なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「なんか捕らえよって声が聞こえたから捕らえたんだけど、これで良かった?」


 陽蓮は呑気に声を掛けた。


「兄さん、なぜここに……」


 林の中とはいえ、ここは後宮の敷地内である。


 男が入っていい場所ではない。


「後宮に革胡の原材料の木が生えているって聞いたからさ。

俺、革胡を自分で作ってみようと思ってるんだよね」


 陽蓮はまったく悪びれずに言った。


 黒ずくめの男を捕らえたのだから、夜中に後宮に忍び込んでは駄目ですよと注意することもできず、曙光は苦笑いを浮かべた。
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