なりゆき皇妃の異世界後宮物語
☬守らなければ
ついに、皇帝の命を狙っていた者が捕まった。


 喜ばしい知らせであるはずなのに、朱熹はショックで深く落ち込んでいた。


 黒ずくめの男は、朱熹がよく知っている者だった。


 九卿の一人、林冲。


 いつも府庫まで案内してくれた、人のよい老臣である。


 心の声だって、たくさん聴いていた。


 それなのに、どうして気付くことができなかったのだろう。


 一方、宮中も皇帝を暗殺しようとしていた者が、九卿の一人であったことに驚きで包まれていた。


 しかも、林冲をよく知る者であれば、その驚きはひとしおだった。


 なにしろ会議中に居眠りをして、いくら怒られてものほほんとしている老臣なのである。


 仕事はよくサボるが人望が厚く、いざという時の決断力は速く正確だった。
< 227 / 303 >

この作品をシェア

pagetop