なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「そんな……そんなことが、できるのですか?」


「理論上は可能だろう。心の声を聴こえなくするすべはある。

現に余の心の声は聴こえないであろう? 心の声をコントロールし、隠したり発したりすることは、やろうと思えば余にもできるはずだ」


 朱熹も騙されていたことに、今更ながら突き付けられる。


 信じきっていた。


 まさか心の声が聴こえることを逆手に取られるとは……。


「それで、林冲は今どこに?」


「牢獄に収容されている。刑は五日後に執行される」


「刑……?」


「もちろん、死刑だ」


 朱熹の体から血の気が引いていった。


 死刑……。それは当然のことと思える。


 長年、皆を騙し続けてきた。


 朱熹だって騙されていた。


あんな人の好さそうな顔をして、心の中では皇帝を暗殺しようと企てていたのだ。
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