なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「じゃあ……」


 曙光が名残惜しそうに、朱熹の頬を撫でる。


「また……」


 朱熹も離れたくない気持ちを押し殺して笑顔を向ける。


 曙光が朱熹の部屋を去った。


 林冲から襲われる前、曙光は心の奥底のとても強い思いである心の声を漏らした。


 当人はまだ、心の声が朱熹に聴かれたことに気がついてはいない。


(あの時聴こえた心の声のことをまた聞きそびれたわ……)


 早く聞きたい。


 本当に朱熹のことを愛しているのか。


 もしも曙光が認めてくれたら、朱熹も告げるのだ。


 私も愛しています、と……。
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