なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 林冲を狂気に走らせる核となる部分が、あの『守らなければ』という声だった。


(知りたい、林冲が何を守ろうとしていたのか……)


 曙光は忙しく、林冲の件が終わるまで会えないと言っていた。


 ならば、文を書こう。


 林冲の心の声を届けなければ。手遅れになる前に。


 朱熹はそう決めると、急いで筆を取り文をしたためた。


 そして今香に文を託す。


(これで大丈夫。あとは曙光様が調べてくれるはず)


 調べても、死刑は免れないかもしれない。それでも、何もせずにいるのは嫌だった。


 ようやくもやもやが晴れて安堵していたのも束の間、朱熹の文は曙光に届かず戻ってきた。
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