なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「申し訳ありません。陛下は今朝早く宮中を出られたそうなのです。お戻りになるのは四日後だと……」


 四日後……林冲の刑が執行される日。


 それでは間に合わないわ!


 朱熹はいてもたってもいられなくなり、陽蓮に会いに行こうと思い立った。


 革胡ばかり弾いてる変わり者かと思っていたら、曙光の兄でれっきとした皇族の一人であるし、林冲を捕まえたのも彼だ。


 きっと、助けになってくれるはずだと思った。


「府庫に行くわ」


 朱熹の言葉に、今香は眉を寄せた。


『こんな時にまた府庫?』


 今香の呆れるような心の声が聴こえてきた。


 こんな時だから府庫に行くのよ! と朱熹は心の中で叫ぶ。


「……分かりました。案内役を探して参ります」
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