なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 今香は忠実に朱熹の命令に従い、部屋を出て行った。


 しかし、待てども待てども今香が帰ってこない。


 昼は過ぎ、日が傾き夕刻に近付く頃、ようやく今香がやってきた。


「お待たせ致しました。なにぶん、これまで案内役を務めていた者がいなくなった為、代わりの者を探すのに時間がかかりました」


「ありがとう!」


 朱熹は今香に礼を述べるやいなや、走って部屋を出て行った。


 新しい案内役は、不愛想な年若い武官だった。


 どうして自分がこんな仕事を押し付けられなきゃいけないんだと不満げな様子が心の声を聴かずとも顔に出ていた。


「ごめんなさい、私急いでるから、あなたも一緒に走ってくださる?」
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