なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 朱熹は案内役を後ろに従いさせ走った。


 芸術の森に着くと、案内役に外で待っているよう伝える。


 中に入り、陽蓮との会話を聞かれると色々面倒だと思ったからだ。


 案内役は渋る様子もなく頷いた。芸術の森にまったく興味がないらしい。


 朱熹は一人で中に入っていくと、一直線に二階の屋上へと急ぐ。


「陽蓮さん!」


 朱熹は扉を開けるなり、大きな声で呼んだ。


 すると陽蓮はいつもの場所で、木にやすりをかけているところだった。


「やあ、久しぶりだね」


 陽蓮は朗らかに笑った。


 朱熹は汗だくになり、息の上がった状態で陽蓮に近付く。


 革胡は弾いていないが、何をしているのかはすぐに分かった。


 革胡を作っているのである。


 後宮に忍び込んで木を探していたところに林冲がやってきたと聞いた。
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