なりゆき皇妃の異世界後宮物語

「今日は……陽蓮さんにお願いがあって来ました」


　朱熹は息も絶え絶えに言った。


「お願い？」


　陽蓮は一瞬、眉を少しだけ上げた。


「そうです。あなたが捕まえた林冲のことです。曙光様を襲った時、守らなければって言ったんです。切羽詰まった、とても強い気持ちのこもった声でした」


「へー、だから？」


　陽蓮は興味なさそうに答えた。


　朱熹はそれでもなお陽蓮に詰め寄った。


「林冲の死刑執行が四日後に迫っていて、それまでに林冲が誰を守ろうとしていたのか知りたいんです」


　急ぎすぎて、自分でもなんて説明が下手くそなんだろうと嫌になった。


　けれど、陽蓮にはこの下手くそな説明でも要点を掴んでくれたらしい。