なりゆき皇妃の異世界後宮物語
朱熹は大きく一歩前に出た。


 門兵の間を力づくで通り抜ける気だ。


「待て……」


 城の中に入ろうとする朱熹に、慌てて門兵が朱熹の肩を掴んだ。


 朱熹は門兵をキッと睨み付けて叫んだ。


「私を誰と思っておる!」


 突然発した朱熹の怒声に、その場にいた全員が固まった。


「触るでない! 無礼者め!」


 あまりの剣幕に、門兵はサッと手を離して道を開けた。


「私に対する非礼は、陛下に対する非礼と心得よ」


 朱熹は、威風堂々と静かに言い放った。


 その風格はまさに皇后の威厳。


 ずんずんと門の中に入っていく朱熹を、皆が狼狽しながら見守る。


「い、いけません!」


 位の高い官吏が止めようとするも、朱熹はまるで聞こえていない風を装い進んで行く。
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