なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 無力な自分が情けなくて、悔しくて、悲しくて、ただ泣くだけの非力な自分が許せない。


 もうかれこれ、林冲の刑が執行されたと聞いて、後宮に引き籠ってから一瞬間が経つ。


 ただ悔やみ続ける毎日に、これでいいのかという思いが湧いてくる。


 私は、これからどう生きていけばいいのだろう。


 特異な能力と皇后という立場は変わらない。


 どんなに無力であると自覚していても、他人に譲ることはできない。


 私が背負っていかなければいけない宿命なのだ。


 じゃあ、どうすればいい?


 大きな権力をふるうことを恐れて、ただ自らの安穏のために生きていくことが、果たして正しいのか……。


 朱熹は、ふと、一人の男性の顔を思い出した。
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