なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 恐る恐る奥へと進んでいくと、小さな文机に座りながら居眠りをしている男性がいた。


 目は大きな黒眼鏡をかけ、長い口髭をたくわえている。


 頭には頭巾被り、見るからに怪しい雰囲気を醸し出している。


(だ、誰……)


 恐る恐る近付いていくと、文机の前に紙が置いてあった。


 覗き込んで文を読んでみる。


【私は新しく府庫の番に任命された書孟(しょもう)と申します。目は光に弱く、耳も遠いため、会話は筆談でお願い致します】


 そう書かれた文の下は、大きく空欄となっていて、用事がある時はそこに記入して彼に伝えるらしい。


(黒眼鏡をかけているのは、目が光に弱いから? 暗いところなら字が読めるということなのかしら?)
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