なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 朱熹は、陽蓮の告白にただただ驚いた。


「……曙光様はこのことを知っているのですか?」


「知らないよ」


「じゃあ、どうして私に教えてくれたのですか?」


「君も僕と同じだろ。君は心の声が聴こえる」


 ……知っていたんだ。


 朱熹は、陽蓮という男の底知れぬ深さに驚きの連続だった。


「そんな力があるならなおさら、どうしてその力を国のために使おうとは思わないのですか?」


「僕は、五年前の大災害を知っていた。

皆が死ぬことを知っていながら、助けようとはしなかった。

僕は、自分と曙光だけが生き残る道を選んだ」


「皆を助けることができなかったから?」


 今の朱熹と同じように、救えなかったことを自分のせいにして、それで全てのことを放棄したのかと朱熹は思った。
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