なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 しかし、陽蓮の瞳は、恐ろしいほど冷たかった。


「違うよ。わざと助けなかったんだ。彼らは天江国にとって害となると思ったからね」


 朱熹は絶句した。


 陽蓮は自分の親や親戚を害とみなして、見殺しにしていたのだ。


「分かっただろ。

僕はあまりにも分かりすぎてしまう。

僕が皇帝になっても国は栄えるだろう。

曙光よりも上手くできるかもしれない。

けれど、僕が皇帝になれば切り捨てる者もたくさん出る。

僕の考えは、死んだ両親や皇族と同じなんだ。

国のためなら何を犠牲にしても構わないと言う自分本位な思考。

その考えに嫌気が差して、君たち心の声が聴こえる一族は皇族の元を離れた。

僕はね、この自分本位な考えが嫌いなんだ。

でも、結果的にそうしてしまう。


僕が、家族を見殺しにしたように」
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