なりゆき皇妃の異世界後宮物語
『僕は、自分が怖いんだ……』


 陽蓮の心の声が、胸に響くように聴こえてきた。


 陽蓮の心の声を聴くのが初めてだった。


 その初めて聴こえた心の声は、葛藤や恐怖の色が切実に表れていた。


「曙光だけが、僕らの中で浮いていた。

曙光は、国のためではなく、人々を幸せにするために国を栄えようと考えていた。

僕らの中には根本的にその意識が乏しい。

国のために、人がいる、だから犠牲者が出ても痛くも痒くもないのだ。

僕は曙光の考えを聞いて、衝撃が走ったよ。

こいつを皇帝にしたら、どんなに面白いかと思った。

曙光のいう理想の国を見てみたいと思った。

だから僕は、家族に死んでもらったんだ」


 朱熹は、背筋がゾクっとした。


 初めて陽蓮が怖いと思った。
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