なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 陽蓮が手を下したわけではない。


ただ、陽蓮はいくらでも家族を救う手立てを考えることができた。


しかし、それをしなかった……。


「僕が曙光の側近として働かないのは、僕がいたら曙光の理想とする国作りはできないからだ。

僕の意思が入ってしまう。僕は無意識に犠牲者を増やす。

だから離れて、曙光が作る国を見ていようと思ったんだ」


 朱熹が思っていた以上に、陽蓮は多くのことを考えて、権力を放棄していた。


 陽蓮の思いを聞くと、朱熹の悩みがちっぽけなことのように思えてくる。


「陽蓮さんは、曙光様に期待しているのですね」


「そうだよ。実際、あいつは実に面白い政治をする。

今回だって、僕ならこれを機に天河国に乗り込んで一気に国土を広げようとしたと思う。

こんな千載一遇のチャンス滅多にやってこないのに、あいつはこのチャンスを、林冲を助けることに使った」
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