なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「すまない、そうであった」


 林冲からたしなめられ、曙光は首をすくめた。


「だが林冲……」


「書孟」


「すまない、書孟。良い知らせがあるぞ。天河国に人質に取られていた家族全員、引き渡してもらった。皆、無事だ!」


「本当ですか!」


 林冲の顔がぱっと華やぎ、そして笑顔から一転、喜びの涙が浮かんできた。


 林冲は体から力が抜けたように、ガクっと跪いた。


「……ありがとうございます」


 林冲は頭を床につけ、震えながら涙を零して言った。


「良いのだ、よく耐えたな」


 曙光も膝をつき、嗚咽で震える林冲の背中をそっと撫でた。


 朱熹は唖然とこの光景を眺めていた。


 目の前で感動的なやり取りがされているも、何が起きているのかさっぱり分からなかった。
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