なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「あ、あの……曙光様、林冲は死刑になったのでは?」


 朱熹の問いに、曙光は申し訳なさそうに頭を下げた。


「すまぬ、朱熹。あの時はああ言うしかなかったのだ。

林冲を生かしておいたことが国内に知られれば反発は必至。

それに、天河国と戦争になるか否かの大事な局面で、林冲の家族も救えるかどうかも分からない極めて繊細な時期だった。朱熹に詳しく説明する時間はなかったのだ」


「ということは、曙光様はすでに全てをご存知だったのですか?」


 曙光はコクリと頷いた。


「おかしいと思ったのだ。林冲ほど賢い男なら、あんなことでは余は死なないと分かっていたはずだ。

それに、天河国への情報漏洩も、知られても構わないような内容しか伝えていなかった。

九卿の林冲であれば国が傾くような極秘事項を知っていたにも関わらずに、だ。

だから、死刑までの五日の間に林冲のことを徹底的に調べた」
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