なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 だからその間宮中からいなかったのだと朱熹は分かった。


「そして、林冲は家族を人質に取られていた事実を知って、直接本人に聞いたのだ。

そしたら全てを教えてくれた。

余が予想していた通りの内容だった。

国内の反発はもちろん、天河国にとっても、林冲は死刑で亡くなったことにする必要があった。

なぜなら心の声が聴こえる人物が天江国にいるというのは、天河国にとって脅威となるからだ。

だから、林冲は死刑で死んだことにした」


「だから私にも、そう伝えたのですね」


 朱熹は淡々と言った。


「そうだ。そしてすぐに天河国へと出立した。

派閥争いで多くの兵を失った今の天河国は、少ない戦力でも潰すことができるほど疲弊していた。

だから兵を引き連れ、いつでも戦争を仕掛けることができると匂わせ、林冲の家族を引き渡してもらった。

彼らにとっては、もう用のなくなった家族を引き渡すだけで、戦争を回避できるなら、いい取引きだと思ったのだろう。

思っていたよりもすんなり引き渡してもらえた」
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