なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「いいえ、聴こえるのは私だけです。私たち一族全員が心の声が聴こえるわけではないのです。百年の間に、一人か二人。今の私と朱熹様のように」


 朱熹はぱっと顔が輝いた。


「もしかして、もしかしたらと思っていたのですが、私たちは同じ一族なのですか?」


 書孟は目を細めて朱熹を見つめた。


「ええ、そうです。私たちは親族です。

三十年前、天江国皇族の元を去った時、私たち一族も分かれました。

天江国に残る者、天江国にほとほと嫌気が差して他国へ移る者。

二分した私たちは、全く別の人生を歩むことになる。

他国に渡った私たちは、天河国に捕らわれ自由を失い、何の因果か、再び天江国に仕えることになった。

天江国に残った者たちは幸せに暮らしているのかと思いきや、残っていたのは朱熹様だけ。

そして朱熹様も天江国に仕えることになった。

私たちは、きっとこれが運命なのでしょうね」
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