なりゆき皇妃の異世界後宮物語
☬比翼と連理
 その日の夜、曙光は久々に朱熹の部屋に赴いた。


「天河国から帰ってきたばかりだというのに、お疲れでしょう」


 朱熹は曙光の体を気遣い、寝屋に通した。


 部屋には、ぴたりと寄り添うように並べられた布団が二つ。


 しかしながらこれはいつもの光景である。


 朱熹は深い意味など持っていなかった。


 純粋にゆっくり休んでほしいと思ったのだ。


 一方、寝屋に案内された曙光は並んだ布団を見ながら考え込んだ。


 そして、にやりと口元に微笑みを一瞬浮かべた。


「そうだな、少し横になるかな」


 スタスタと歩いていき、布団の上に横になる。


 その姿を見て朱熹は、安心したように微笑みを浮かべた。


「それではゆっくりとお休みください」


 静かに扉を閉めようとすると、「待て」と曙光から声が掛かる。
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