なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「どこに行く?」


「隣の部屋におります。用がありましたらお呼びください」


「それでは来た意味がないだろう」


 曙光から言われて、それもそうかと思い直し、部屋の中へ入る。


 曙光が横になっている枕の横の方に座り、扇子でゆっくりと風を扇ぐ。


「うむ、涼しいな」


 朱熹が扇ぐ風に前髪を揺らしながら、曙光は幸せそうに目を閉じた。


 こんな静かな時間でさえ愛おしい。


 曙光に風を送りながら、朱熹は好きな人と共にいられる時間を噛みしめた。


「これも悪くないが、余はこちらの方が好きだ」


 そう言って曙光は上半身を起こし、朱熹の膝の上に頭を乗せた。


 膝枕の形となり、朱熹は驚きドキドキした。


 曙光は満足そうに目を瞑っている。


 このまま寝るつもりだろうか。
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