なりゆき皇妃の異世界後宮物語
曙光の思いは、とても深く、胸が締め付けられるくらい朱熹への気持ちでいっぱいだった。


 涙が止めどなく溢れている朱熹を、曙光はそっと抱き寄せる。


 曙光の胸の中に抱かれながら、朱熹は瞼を閉じる。


 幸せな充足感。そして愛おしさとやすらぎに包まれているようだ。


 彼なら大丈夫。


 彼と一緒なら、どんな苦難でも乗り越えられる。


 ずっと朱熹を思い、守り続けてくれるだろう。


 そう信じられる安心感が曙光にはあった。


「私の心の声も曙光様に聴こえたらいいのに……」


「昼間、あれほど聴かれたくはないとわめいておったではないか」


「だって、恥ずかしかったのです。私の心の中は曙光様でいっぱいですから」


「え……?」


 朱熹は、顔を上げて、曙光を見つめた。
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