なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 ザワザワとどよめきが起こる。


 陛下は眉間に皺を寄せ、朱熹を見つめる。


「……なぜだ?」


「それには毒がついているからです。皿に毒が塗られています」


 会場が混乱に湧いた。


毒などという物騒な言葉に、整列が乱れる。


 朱熹の言葉に、陛下は餡餅を皿に戻した。


「おい、女! それは本当か!」


 屈強そうな武官が朱熹に詰め寄る。


「本当でございます。今すぐお調べください」


「なぜ毒が皿についていることを知っている! お前が塗ったのか!」


「いいえ、違います!」


 朱熹は武官を真っ直ぐに見上げる。


武官は腰の刀に手をかけ、いつでも鞘から抜き出せる準備をしていた。


 様々な心の声が室内に響き渡る中、朱熹はおどろおどろしい先ほどの声を正確に聴き分けた。
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