なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「紫家……」


 そういえば聞いたことがある。


紫家といえば豪族の大名家である。


そこの令嬢になるというのは、いくらなんでも嘘が大きすぎる。


「あの、私は本当に正妃になるのですか?」


「なるよ。陛下が望めば白い花も赤くする。

平民だって令嬢にできる」


(私が、正妃に……。恐れ多すぎて怖い。こんな能力を持っているばかりに……)


 不安げな様子の朱熹を見て、秦明は心の中で思った。


『正妃になると喜んでいるとばかり思っていたが、どうも違うらしい。

相思相愛かと思ったら陛下の一方的な恋慕か?

あいつはちゃんとこの子に気持ちを伝えたのか?』
< 40 / 303 >

この作品をシェア

pagetop