なりゆき皇妃の異世界後宮物語
☬謎の演奏者
 次の日、朱熹の輿入りはとてもひっそりと行われた。


 大々的な婚姻の発表もなければ式も行われない。


 あまりにもあっさりとしすぎていて、後宮に妃候補が入廷してきた時と殆ど変わりはなった。


 しかも後宮に入ったというのに、陛下は一向に朱熹を訪ねなかった。


 陛下がついにご結婚なさった、いよいよお世継ぎの誕生かと湧いた家臣たちも、ただの政略結婚で形ばかりの正妃かとすぐに呆れられた。


 朱熹はこの状況に喜んでいいのか悲しんだ方がいいのか分からなかった。


 形ばかりの正妃とは本当のことであるし、陛下が朱熹の部屋を訪れないのも女として見ていないからだと納得できる。


 けれど、あまりにも陛下から音沙汰がなさすぎて、自分は何の為に正妃になったのか分からなかった。


そもそも正妃である必要があるのだろうか。


 朱熹は暇な一日、そんなことばかりを考えるのであった。
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